原価計算

パンの原価率の計算方法|1個ずつ正確に出す手順【具体例つき】

2026年6月20日 ・ 現役のパン屋が書いています

「うちのパン、原価率って何%なんだろう?」——そう思って 材料費 ÷ 売価 でざっくり計算したことはありませんか。 実はその計算、本当の原価より低く出ていることがほとんどです。 この記事では、仕込み品・生地の歩留まり・包材まで含めた「正しい原価率」の出し方を、クリームパンを例に1円単位まで追いかけます。

そもそも原価率とは

原価率は、売価に対して材料原価がどれくらいの割合かを示す数字です。計算式はシンプルです。

原価率(%) = 1個あたりの材料原価 ÷ 売価 × 100

たとえば原価60円・売価180円なら、原価率は 60 ÷ 180 × 100 = 33.3% です。 問題は「1個あたりの材料原価」を正確に出すのが、見た目よりずっと難しいことにあります。

パン屋の適正原価率の目安

よく「食材原価率は 30〜35% が健全」と言われます。ただしこれは最終的な会計(店全体・期末)の数字であって、商品1個の材料原価率とは分けて考える必要があります。

なぜなら、パン屋には必ず廃棄ロスが出るからです。売れ残り・焼き損じ・端材——そのコストは売れた商品が負担します。つまり商品単位の粗原価(材料だけの原価率)に、実際は +3〜5ポイント、もしくはそれ以上が上乗せされて着地します。

ここを誤解しない 商品の材料原価率が32%でも、ロスを乗せた実効原価率は軽く35%を超えてくるのが普通です。「30〜35%の健全圏に収めたい」なら、商品単位の材料原価率はそれより低めに抑えておく必要がある——これが、1個ずつ正確に出す本当の理由です。

食パンは安い、菓子パンは高い——その常識が崩れてきた

原価率は、商品によっても大きく違います。昔から「食事系の食パンは原価率が低め、卵やバターを使う菓子パン・惣菜パンは高め」と言われてきました。これは今も基本の傾向です。

——ただし、この常識は一概には言えなくなっています。理由は小麦粉の高騰。食パンは粉が主役のパンなので、小麦が上がると原価率が直撃で上がる。「食パンだから原価率は安心」とは、もう言い切れません。

救いになっているのが高級食パンのブームです。一斤数百円が当たり前だった食パンに高価格帯が定着し、売価のほうも上げられる土壌ができた。おかげで上がった粉代を吸収して「なんとかなっている」面があります。

だから感覚で決めない 「食パンは安いはず」「菓子パンは高いはず」——その昔の感覚のまま値付けすると、今の原価率を読み違えます。材料費がこれだけ動く時代に効くのは、思い込みではなく、1個ずつ実際に計算した数字です。

「材料費 ÷ 売価」だけでは足りない4つの見落とし

多くの人が原価を低く見積もってしまうのは、次の4つを計算に入れていないからです。

① 仕込み品(カスタード・あんなど)の本当の原価

カスタードクリームのような「自分で作る中間品」は、レシピの材料費を合計しただけでは足りません。 炊くと水分が飛んで仕上がり重量が減るため、1gあたりの原価は材料の合計より高くなります。

仕込み品の原価/g = 材料の合計原価 ÷(合計重量 × 歩留まり率)

歩留まり(仕上がり率)を無視すると、ここで必ず原価を過小評価します。

② 生地の歩留まり(焼き減り・分割ロス)

生地も、こねた直後の重量と、焼き上がりの重量は違います。分割の端材や焼成中の水分蒸発で目減りするぶん、実質の単価は上がります。

③ 包材(袋・トレー・ラベル)

個包装の袋、惣菜パンのトレー、シール。1枚2〜5円でも、点数が多いパン屋では積み上がります。包材は立派な原価です。

④ ロス・廃棄

売れ残って廃棄したぶんのコストは、売れた商品が負担しています。廃棄率が高い商品ほど、実質原価率は跳ね上がります。

具体例:クリームパン1個の原価率を計算してみる

題材は自家製カスタードのクリームパン(売価 180円)。 菓子パンの中では原価が安い部類ですが、「仕込み品(カスタード)+生地」の二段構造を持つので、正確に出す手順を練習するのにちょうどいい題材です。

使う材料と単価

項目1個あたりの使用量原価/g原価
菓子パン生地50g0.50円25.0円
カスタードクリーム(仕込み品)40g0.80円32.0円
包材(個包装袋)1枚2.0円

ここでカスタードの「原価/g=0.80円」は、材料を合計しただけの数字ではなく、歩留まりを反映した後の値です。 たとえば材料合計500gぶんを炊いて420gに仕上がるなら、歩留まりは84%。原価はその仕上がり420gで割って初めて正しい単価になります。

1個あたりの原価合計

25.0円(生地) + 32.0円(クリーム) + 2.0円(包材) = 59.0円

原価率

59.0円 ÷ 180円 × 100 = 32.8%

ただしこの32.8%は材料だけの粗原価率です。ここに前述の廃棄ロスが必ず乗るので、実際に着地する原価率はさらに数ポイント上。クリームパンは菓子パンの中でも安い部類ですが、それでも余裕のある数字ではありません

ここがポイント もし包材とクリームの歩留まりを無視して「生地25円+クリームの材料費だけ約27円=約52円」と見ていたら、原価率は約28.9%。 実際は32.8%で、その差は約4ポイント。1個では小さくても、全商品×日々の販売数で積み上がると効いてきます。

計算が合っていても、続けるのが本当に大変

——ここまで読んで気づいたと思いますが、これを全商品ぶん、しかも材料の仕入れ値が変わるたびにやり直すのが現実です。 小麦やバターが値上がりするたびに、生地の原価/g が変わり、それを使う全パンの原価率がずれていく。 Excelで組んでも、仕込み品の歩留まりや複数の生地が絡むと、数式がすぐ手に負えなくなります。

原価管理が続かない一番の理由は「やり方がわからない」ではなく、「計算が面倒で更新が止まる」ことです。

この計算、ぜんぶ自動でやります

ベーカリーノートプロは、材料の単価を入れておくだけで、仕込み品・生地の歩留まり・包材まで含めた原価率を1個ずつ自動計算。仕入れ値を変えれば、関係する全商品の原価率が一気に更新されます。

よくある質問

パン屋の原価率の平均はどのくらい?

食材原価率30〜35%が健全の目安とされます。ただしこれは店全体・期末の最終会計の数字で、商品1個の材料原価率にはロスが+3〜5ポイント以上乗ります。商品単位ではそれより低めを狙う必要があります。

菓子パンと食パン、原価率はどっちが高い?

一般には卵・バターを使う菓子パンが高め、食事系の食パンが低めとされてきました。ただし小麦粉高騰で食パンの原価率も上がっており、一概には言えません。感覚でなく商品ごとに計算するのが確実です。

100円のパンの原価はいくら?

売価100円なら、健全圏(材料原価率30〜35%)で材料原価はおおむね30〜35円が一つの目安。ただしロスや商品で変わるため、実際は計算が必要です。

まとめ