パンの原価計算をエクセルで作る方法|手順・セル式と、限界がくる理由
パンの原価管理、まずはエクセルで——というのは、とても自然な出発点です。実際、基本の原価表ならエクセルで作れます。 この記事では、実際のセル式まで含めた作り方を示したうえで、続けていくと必ずぶつかる"エクセルの限界"も正直にお伝えします。
エクセルの原価計算は「3枚のシート」で考える
パンの原価は、①材料マスタ → ②生地 → ③商品の順に積み上げます。シートを3枚に分けると整理しやすくなります。
① 材料マスタ:すべての土台「円/g」を出す
まず、仕入れる材料を1gあたりの単価(円/g)に直します。価格 ÷ グラム数、です。
| A:材料名 | B:価格(円) | C:内容量 | D:単位 | E:円/g |
|---|---|---|---|---|
| 強力粉 | 600 | 1 | kg | 0.60 |
| バター | 1,800 | 450 | g | 4.00 |
| 砂糖 | 250 | 1 | kg | 0.25 |
E列(円/g)のセル式は、単位が kg/L のときだけ1000倍して合わせます。
② 生地シート:ベーカーズ%から原価/gを出す
生地はベーカーズ%で組みます。粉量を決め、各材料の重量=粉量×%、原価=重量×円/g。 円/gは材料マスタから VLOOKUP で引っぱります。
③ 商品シート:原価と原価率を出す
商品ごとに、使う生地・具材・包材を積み上げ、最後に売価で割って原価率を出します。
ここまでは、エクセルで十分できる
単品の食パンや、シンプルな菓子パンくらいなら、この3シートで原価率まで出せます。エクセルは優秀な道具です。 ——問題は、ここから先にあります。
エクセルが「しんどくなる」5つのポイント
エクセルが原価を計算できないわけではありません。きちんと組めば計算はできます。しんどくなるのは、パン屋特有の事情が重なってきたときです。
① 仕込み品の歩留まり(多段の計算)
カスタードやあんのような自分で炊く仕込み品は、「材料 → 仕込み品 → 商品」と原価が二段、三段になります。 しかも炊くと水分が飛んで重量が減るため、歩留まりで割り直す必要がある。シートをまたいだ参照が一気に複雑になります。
② 複合生地・複数の生地
2種類の生地を混ぜる、湯種を別に作る、といった複合生地が入ると、生地シートが枝分かれして式が追いきれなくなります。
③ 仕入れ値が変わるたびの更新
材料マスタを1つ直せば自動で再計算される——はずですが、現実は材料が数十、商品が数十と増えるほど、参照がどこに伸びているか分からなくなり、 1つの式の崩れに気づけない。小麦やバターが値上がりするたびに、この不安がつきまといます。
④ 栄養成分・アレルギー・食品表示まで広げると非現実的
原価が出せても、次は食品表示。栄養成分やアレルゲンまでエクセルで管理しようとすると、 シートの数も式も手に負えなくなります。
⑤ 属人化:作った人しか触れない
作り込んだエクセルほど、本人にしか中身が分からない。引き継げない、ちょっと直すのが怖い、いつの間にか更新が止まる—— これが、原価管理がいちばん挫折する理由です。
「作れる」と「続けられる」は別の問題
エクセルで原価表を作ることはできます。難しいのは、商品が増え、仕入れ値が動き、表示まで求められる中で、それを止めずに続けること。 表計算は汎用の道具なので、パン屋の事情(仕込み品・複合生地・歩留まり・表示)に合わせて自分で組み続ける負担が、どうしても残ります。
エクセルの「しんどい部分」を、最初から肩代わり
ベーカリーノートプロは、材料の単価を入れるだけで、仕込み品の歩留まりも複合生地も含めて原価率を自動計算。仕入れ値を変えれば全商品が一度に更新され、栄養成分・アレルギー・食品表示まで同じデータでつながります。エクセルの組み直しから卒業できます。
まとめ
- エクセルの原価計算は材料マスタ → 生地 → 商品の3シートで組める
- 円/gを出し、生地はベーカーズ%、商品は売価で割って原価率——基本は十分作れる
- しんどくなるのは仕込み品の歩留まり・複合生地・仕入れ更新・表示への拡張・属人化
- エクセルは「計算できない」のではなく、続けるのがしんどい
- 「作れる」と「続けられる」は別。そこが専用ツールの出番