生地・配合

パンの仕込み水温の計算方法|こね上げ温度を安定させる式と摩擦熱

2026年6月25日 ・ 現役のパン屋が書いています

「夏になると、同じレシピなのに生地がだれる」「冬は発酵が遅い」——その原因の多くは、こね上げ温度がブレていることにあります。 そして、こね上げ温度を毎回そろえる一番の調整弁が 仕込み水の温度 です。 実は水温は勘ではなく、式で出せます。ただし——たった一つだけ、厄介な変数があります。

なぜ「こね上げ温度」が大事なのか

パンの発酵は、温度で進みます。こね上がった生地の温度が日によって違えば、同じ時間置いても発酵の進み方が変わる。過発酵になったり、逆に上がりきらなかったり。仕上がりが安定しない店は、たいていここが揺れています。

問題は、季節で粉も室温も水温も変わること。夏の常温の水と、冬の常温の水では温度がまったく違う。だから「いつも同じ水」を使っていると、こね上げ温度は季節に振り回されます。そこを水温で逆に補正してやるのが、安定したパン作りの基本です。

仕込み水温の計算式

水温を出す式は、昔から使われている「教科書式」があります。

仕込み水温 = 目標こね上げ温度 × 3 −(室温 + 粉温 + 摩擦熱)

考え方はシンプルです。こね上がりの生地温度は、ざっくり 室温・粉温・摩擦熱・水温の平均で決まる。だから目標温度を3倍して、水以外の3要素(室温・粉温・摩擦熱)を引けば、必要な水温が出る——という理屈です。 なお粉温が分からなければ、室温と同じとみなして計算すればOK(冷蔵庫に粉を置いている場合だけ、その温度を使います)。

具体例

目標こね上げ温度 26℃、室温 25℃、粉温も 25℃、摩擦熱を 8℃ とすると——

26 × 3 −(25 + 25 + 8)= 78 − 58 = 20℃

つまり、この日は 20℃の水 で仕込めば、狙いの26℃に近づく、というわけです。式そのものは、引き算だけ。難しくありません。

いちばんの難所は「摩擦熱」

——ところが、この式には一つだけ、自分では分かりにくい数字があります。摩擦熱です。

摩擦熱とは、ミキシング中に生地が温まる分のこと。ミキサーが生地をこねる摩擦で、生地温度は上がります。問題は、この上がり幅が——

教科書には「縦型なら○℃」のような目安が載っていますが、あなたの厨房・あなたの機材の実際の値とは、まず一致しません。ここを勘で置くと、式が合っていてもこね上げ温度がズレます。仕込み水温計算でつまずくのは、たいてい計算ではなく、この摩擦熱の見積もりです。

摩擦熱は「測る」もの——実績から逆算する

では、どうするか。答えは「測る」です。一度仕込んでみて、こね上がりの温度を実際に測れば、その日の摩擦熱は逆算できます。さっきの式を、摩擦熱について解き直すだけです。

摩擦熱 = こね上げ温度 × 3 −(仕込み水温 + 室温 + 粉温)

たとえば、水温20℃・室温25℃・粉温25℃で仕込んだら、こね上がりが 27℃(狙いの26℃より1℃高い)だったとします。すると——

27 × 3 −(20 + 25 + 25)= 81 − 70 = 摩擦熱 11℃

仮に置いていた 8℃ ではなく、実際は 11℃ だった、と分かります。次回からはこの 11℃ で計算すれば、水温は 17℃(=26×3 −(25+25+11))。一度測るほど、次が正確になる。これを毎回続けて平均していけば、あなたの厨房だけの摩擦熱が見えてきます。

摩擦熱を「自動で学習する」水温計があります

ベーカリーノートプロの仕込み水温度計算機は、室温と目標こね上げ温度を入れるだけで水温を提案。こね上がりの実績を記録すると、その都度こね上げ温度から摩擦熱を逆算し、直近数回の移動平均で自動更新します。機材・仕込み量・加水ごとにパターンを分けられるので、使うほどあなたの厨房に最適化されていく“育つ”水温計です。ログイン不要・無料、データは端末内に保存されます。

よくある質問

パンの仕込み水温の計算式は?

「仕込み水温 = 目標こね上げ温度 × 3 −(室温 + 粉温 + 摩擦熱)」が基本です。粉温が分からなければ室温と同じとして計算します。

摩擦熱の目安は?

ミキサーの種類・仕込み量・加水・回転時間・季節で変わり、一律の正解はありません。こね上がり温度を測って「こね上げ温度×3 −(水温+室温+粉温)」で逆算し、自分の厨房の値を知るのが正確です。

こね上げ温度は何度がいい?

製法やパンによりますが、ストレート法の食事パンでおおむね24〜27℃あたりが一つの目安。何より「毎回同じ温度に揃える」ことが大切です。

まとめ