開業・資金編

パン屋開業の資金はいくら?|総額の目安・内訳・融資・運転資金

2026年6月20日 ・ 現役のパン屋が書いています

「パン屋を開くのに、結局いくら必要なの?」——これは、やり方で大きく変わります。 中古でそろえるか新品でそろえるか、居抜きかスケルトンか。それでも"目安の幅"は示せます。 この記事では、総額のレンジ・お金が飛ぶ内訳・融資・そして見落としがちな運転資金まで、実額ベースで整理します。

総額の目安:中古で約1,000万、新品なら約1,800万

小規模なパン屋を1軒立ち上げる場合、ざっくりした目安はこのあたりです。

ルート主な中身総額の目安
中古でそろえる
(業者保証あり)
内装・厨房工事 約500万+機材 約500万約1,000万円
新品でそろえるスケルトンから内装+新品機材
(店舗 約1,000万+機材 約800万)
約1,800万円
総額を左右する2大変数 総額の差は、ほぼ「機材」と「内装・厨房工事」で決まります。居抜き物件で工事を抑え、機材を中古にすれば大きく圧縮できますし、スケルトンから新品でそろえれば一気に上がります。

お金が飛ぶのは「機材」——パン屋は設備産業

飲食の中でも、パン屋は機材が高い業態です。主な機材を挙げるだけでもこれだけあります。

とくにオーブンとミキサーは、1台で数十万〜100万円超になることもある大物。だからこそ、機材をどうそろえるかが総額を大きく動かします。

賢い圧縮:予算を削っていい設備・削っちゃダメな設備

機材を中古で抑えるのは有効ですが、「どこの予算を削るか」を間違えると危険です。ここでの「削る」は設備を無くすことではなく、中古や汎用品にして予算を抑えるという意味。線引きはシンプルで、専門設備かどうかです。

対象理由
予算を削ってOK天板・パン型・冷蔵庫・冷凍庫・ラック・陳列棚・トレイ・トング などの汎用品専門設備ではないので、壊れても修理業者が多く、調達もしやすい
予算を削っちゃダメオーブン・ミキサーなどの専門・大型機材壊れたら修理先を自力で探すしかなく、搬入・設置も大がかり。保証付きの中古か新品
経験者からの注意 保証なしの個人売買で極限まで予算を削る方法もありますが、おすすめしません。100万円クラスのオーブンが壊れても自己責任ですし、大型機材は搬入・設置に大きな危険もともないます。数十万円の差なら、保証付きの中古を強く勧めます

自己資金と融資:最初は日本政策金融公庫で十分

開業資金は、すべて自己資金でまかなう必要はありません。自己資金は総額の2〜3割を一つの目安に、残りを融資でまかなうのが現実的です。

資金配分の例 たとえば1,000万円規模の開業なら、自己資金300万円+融資800万円ほど、というのが現実的な形です。

融資先は、最初は日本政策金融公庫で十分です。5,000万円級の超大型店でもない限り、まずはここを軸に考えれば問題ありません。 創業向けの融資制度があり、開業者の最初の相談先として定番です。

意外かもしれませんが、銀行や信用金庫は、開業の段階ではあまり貸してくれません。まだ事業の実績がないからです。これらは実績を積んでからが基本。なお、銀行より信用金庫のほうが貸してくれる傾向はありますが、開業時にかぎれば公庫だけで足りてしまうことがほとんどです。

経験者の知恵:公庫は完済しきらない 少し意外な話を。公庫からの借入は、完済しきらないほうが資金繰りはラクになります。返済中でも、延滞なく信用を積んでいれば同じ枠をもう一度借りるのは驚くほど簡単だからです。たとえば500万円を借りて300万円を返済し(残り200万円)、という状態。ここで返した300万円ぶんを再び借りるのは、審査が即日で終わることもあるほどスムーズです。ところがいったん完済してしまうと次は「新規」扱いに戻り、事業計画書をはじめ多くの書類を出し直して、開業時と同じ審査を通さないと借りられません。少し残して借入の関係を切らさないのも、資金繰りを守る一つの考え方です。

見落としがちな「運転資金」——ここで詰む人が多い

そして、資金計画でいちばん見落とされるのが運転資金です。設備や工事のお金(開業資金)とは別に、開業後しばらくを回すための現金を用意しておく必要があります。

運転資金の目安 お店を回す運転資金(家賃・光熱費・材料費などの固定費の3〜6ヶ月分)として、300万円くらいあると安心です。 そしてこれとは別に、自分の生活費も見ておくこと。開業直後は収入が薄いので、ここが意外と効いてきます。

さらに見落としがちなのが、開業前の準備期間も無収入だということ。物件探し・工事・機材の搬入・試作と、準備に半年ほどかかることも珍しくありません。 その間もずっと生活費は出ていきます。だから生活費は、「準備期間+開業後」をまとめて見込んでおくと安全です。

工事は「遅れる前提」で しかも準備は、予定どおりに進むとは限りません。工事の遅れはよくあることで、1ヶ月以上ずれ込むのも珍しくない。 開業が後ろ倒しになるほど無収入の期間が延び、家賃などは出続けます。1ヶ月の遅れはかなり痛い。工期の遅れも織り込んで資金を見ておくと安心です。

開業してすぐ黒字になることは、まずありません。お客様がつくまでには時間がかかります。 ここで運転資金が足りないと、軌道に乗る前に資金ショートして詰む——これが開業でいちばん多い失敗のひとつです。 設備にお金を使い切らず、手元の現金を残しておくことが、開業後の自分を守ります。

「総額に余裕がある」は当てにしない 気をつけたいのは、設備にお金をかけるほど、手元に残る運転資金は薄くなること。 開業直後は想定外の出費も続きます。資金計画の数字に余裕があるように見えても、手元の現金は厚めに残しておくのが安全です。

資金が見えたら、次は「開業後に利益を残す」

開業資金を用意できても、続けられるかは別の話。パン屋は薄利多売だからこそ、1個ずつの原価と利益を正確に掴むことが、運転資金を守る最大の武器になります。ベーカリーノートプロは、その原価計算をまるごと引き受けます。

まとめ

※金額はあくまで一般的な目安です。物件・地域・規模・導入する機材によって大きく変わります。融資制度の詳細は日本政策金融公庫などの最新情報をご確認ください。